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ザ・ベスト・アルバム(サドン・フィクション)

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ザ・ベスト・アルバム(サドン・フィクション)
ブログ紹介
マンデイ太田超短編小説集
文春文庫「Sudden Fiction」のスタイルをまねて、ブログ一回分読みきりの小説を書きます。せいぜいスクロール一回が目安です。
タイトルは、音楽のタイトルから借用していますが、内容は関係ありません。
著作権はハンドル・ネーム、マンデイ太田に帰属します。
2007年4月17日からタイトルに(サドン・フィクション)と明記するように変更しました。間違った検索にかかるのを防ぐためです。
5月17日から文字数を300字前後とすることにしました。

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タイトル 日 時
ホワッツ・ゴーイン・オン(サドン・ストーリー)
ぼくは自分が中国の商社の人間だとスーダン当局を完全にだましてスーダン軍のヘリコプターに乗リ、西部のダルフール地域に入った。ジェノサイドの地域だ。途中兵士は、自分が破壊しつくした村々の上を旋回し自慢した。粗末な木で作られた部族の家を近代兵器で破壊する意味がわからなかった。戦争がエスカレートするとすべてが敵に見える。敵が増える。完全に敵のいない世界を求め、破壊は隣国チャドまで及ぶ。国境地帯でヘリコプターを降り、内通者と落ち合う。僕は難民キャンプへ行く。しかし難民たちはスーダン政府の後ろ盾の中国人を憎... ...続きを見る

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2007/06/02 16:28
キャント・バイ・ミー・ラブ(サドン・ストーリー)
ぼくらは純粋に愛し合っていたが、彼女はものすごい浪費家でもあった。 結婚前高価なブランド品をたくさんプレゼントしたが結婚後も変わらなかった。 プレゼントなんて愛の飾りに過ぎず、本質はどこかにあるはずだった。 本気で金がないので贅沢はできないと告げると、結局彼女はかごの鳥に耐えられずたびたび実家に帰ってブランド品を買うことになった。 僕は彼女をカウンセラーのところに連れて行った。 数ヶ月して彼女は自分が何か取り違えていることを悟った。 そして笑顔で言った。 「わたし、もう一度自分の人... ...続きを見る

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2007/06/01 14:37
スタンド・バイ・ミー(サドン・フィクション)
パパが死んでしまった。 死ぬというのは、とてもあっけなく、命なんてティッシュ・ペーパーでできているみたいだった。 パパは、朝気分が悪いといって救急車で入院した。 最後に交わした言葉は今日の占いことだけだった。もっと気の利いた話をすればよかった。占いはよかった。 パパは手術室に入り、沈黙だけをお土産に帰ってきた。 それから嵐のようにパパの痕跡を消し去るいろんな儀式が始まった。 ようやく家が落ち着きを取り戻したとき、いつもパパがいたソファに座って、パパと同じようにDVDをつけた。 その... ...続きを見る

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2007/05/27 11:37
シー・ラブズ・ユー(サドン・フィクション)
「ねえ、昌男、ちょっといい?」と弘子が言った。 「これから北極行って地球温暖化のデータを集めた後、フラミンゴとダンスしなきゃいけないんだ」と僕は答えた。 「そういうくだらない答えではぐらかすのやめたほうがいいわ。いいわ、あなたが砂漠で喉が渇いていたら先に頭に水かけて頭冷やしてやるわ、じゃあね」と弘子は、スカートのフリルをメリーゴーランドみたいに回転させて立ち去ろうとした。 「今フランミンゴの予定を断った。今晩素敵な夜を過ごす時間作ったけど」と僕は言った。 「あんた馬鹿じゃないの。あたしが... ...続きを見る

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2007/05/25 15:23
ジャンプ(サドン・ストーリー)
「待てこの野郎」と後ろで叫ぶ声がした。 ぼくは、くすねたパンをしっかり抱えて裏路地に駆け込んだ。 けれど路地は行き止まりだった。 「このガキ、おとなしくしろ」と男は息を切りながら言った。 僕は、塀によじ登り、ビルの非常階段に飛びついた。 階段を一気に駆け上がった。 下で男がわけのわからないことを叫んでいた。 ドアは一つも開いていなかった。結局最上階まで上り死ぬほど怖い思いをしながら、屋上に上った。 ビルの屋上から遠く見る街の景色はきれいだった。 するとドアが開いて警備員が僕を捕... ...続きを見る

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2007/05/22 10:40
ノーホエア・マン(サドン・フィクション)
クビになってしまった。 僕は敢えて反論する人間ではなかったので、それはただ間違った駅で電車を降りたのと大差なかった。 独身だし何とかなるさと思っていたが、なんともならなかった。 仕事は詐欺まがいのセールスしかなかった。それなら詐欺師になるさと思ったが、僕はひどいお人よしだった。 失業保険が切れる前にアパート代を引き払い、知り合いを転々としたが限界があった。 最後にクリスチャンで世界一優しい奴も、失業保険が切れたら、すまないな、と言った。 お人よしをやめるのは最初は難しかった。しかし、... ...続きを見る

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2007/05/21 18:05
サッド・カフェ(サドン・フィクション)
「なあ、昔はよくコーヒー一杯で何時間も粘れたものだな」と遠野と久しぶりに再会した夢野は言った。 「何話してたんだろ」と遠野は言った。 「何も覚えてないな」と夢野は答えた。 「俺は一つ覚えているよ」と遠野は言った。 「久野が俺は世界を変えるって宣言してお前が世界は変わらないって言ったのを」 「そういえばそうだ」と夢野は曖昧な返事をした。 「いったいどっちが正しかったと思う」と遠野は言った。 「そういうことにはこだわらないんだ」と夢野はコーヒーショップの窓ガラスに写る自分の姿を見ながら... ...続きを見る

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2007/05/20 15:12
黒く塗れ(サドン・ストーリー)
「なんでこんなマスを埋める作業が勉強なんだよ」とぼくは教師に噛み付いた。 教師は言った。 「汚い字で書かれた答案を読む身にもなってみろ。ます目をB5鉛筆で黒く塗ればいいんだ」と。 「そりゃ間抜けには、ます目は十分広いかもしれないが、僕はこんなちっこいます目に書くべき答えなんか持ってない」と言い返した。 「お前らのお答えなど誰も求めていない。正解を選ぶだけでいいんだ」 「それじゃ犬やインコのショーと同じだな」と言い僕は尻尾を巻いて教室から逃げ出した。 テストのマークシートを10分で埋め... ...続きを見る

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2007/05/19 10:19
リロイ・ブラウンは悪い奴(サドン・フィクション)
「何であんな男にひっかかったのかしら、ねえジェーン」 「そういうあんただってひっかかったじゃない、スーザン」 「私はひっかかってなんかないわよ、ただの友達よ」 「スーザンは友達とも寝るんだ」 「そういう気持ちになったことがあったってだけよ、人生は迷路よ」 「じゃあ、迷路のあちこちにであいつ女に声かけてたんだろうな」 「あなたも声かけられたの、ジェーン」 「もちろん、私も寝たし、よかったわ」 その男はハンサムで、誰からも愛されるいい奴だったが女癖は最低だった。そのため別れ話がこじれ... ...続きを見る

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2007/05/17 10:32
ミニッツ・バイ・ミニッツ(サドン・フィクション)
僕は車の横に立って青空を眺めていた。 頬をなでる風が、時が止まっているのではないことをやっと教えてくれる。 ところで彼女はなかなか出てこない。 ぼくは、彼女の家のドアまで行き、声をかける。 「もうちょっとまってね」 そしてまた車に戻り、今度は車の中で待つ。 ラジオをかける。懐かしい曲がかかる。「時の過ぎ行くままに」。 そしてジングルが鳴り十時の時報を告げる。 もういちど彼女に声をかける。 「そんなにせかさないでよ」 青空に雲がかかり始める。 なんかものすごく貴重な時間を台無... ...続きを見る

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2007/05/16 17:17
ワイルド・サイドを歩け(サドン・フィクション)
 「最近の若い者はひょろっとしちゃって、妙に物分りがよくて、そのくせ自分らしく生きたいって、何か、人生を小奇麗な商店街みたいにしか思ってないみたいね、そう思わない」とバーのママは僕に言った。  「人生が小奇麗な商店街だったら、その一本横道は全部風俗街さ。おれならそこにそのひょろっとした無用心な最近の若者が紛れ込むのを待つがね」と常連の松さんが言った。  「といっても最近じゃ裏通りは中国人の縄張りだからな。日本人の世間知らずは、やっぱり小奇麗な商店街を世界のすべてだと思って生きるわけさ」と続け... ...続きを見る

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2007/05/12 10:21
チェンジ・オブ・ハート(サドン・フィクション)
 街は雨。  のぼせ上がった昼のビジネスマンの頭をちょっと冷やしてやろうと言う程度の夜の雨。  恋人達が傘を差し、身体を寄せ合うのに調度いい雨。  先を急ぐ奴には、別に邪魔にならない程度の雨。  コーヒーショップで、文庫本を呼んでいる奴には、二杯目のコーヒーを注文するよい理由になる雨。  僕は、手で合図をしてコーヒーをもう一杯注文した。  すると、彼女がやっと来た。  「ひさしぶり」とお互いに言い合った。  「遅くなってごめん」と彼女は続けた。  「話すと長いから、雨のせいにし... ...続きを見る

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2007/05/10 16:02
テイク・イット・イージー(サドン・フィクション)
 野球場の芝は5月の太陽に照らされて、キラキラ輝いていた。  僕は早朝から呼び出されて、友達の野球チームの試合に狩り出されたのだ。野球なんてもうずっとやっていなかった。最後の野球のボールに触ったのは、神宮のバッティングセンターだった。あの時は彼女と一緒だったから気負いすぎて空振りばかりしたな。そういえばあいつはどうしたのだろう。きっと僕の空振りのひどさに見切りをつけて、もっと優秀なバッターと結婚しているのだ。  試合前に、ユニフォームを借りてきたが、だぶだぶのものしかなかった。どう見ても野球... ...続きを見る

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2007/05/07 11:11
ブルータートルの夢(サドン・フィクション)
 「やあアリスじゃないか。わしが地球一周している間にずいぶん大きくなったものだな。偶然だよ。ちょっと旅の途中で身体を安めにこのビーチに来たんだ。君もリゾートに来たのかい。君のビキニは、アオウミガメのハートだってノックアウトしちゃうくらいだよ」とアオウミガメは、晴れ上がった青空の下、真っ白な砂浜にうつぶせになって甲羅干ししながら言った。もちろん仰向けになると死活だから。  アリスは友達と南の島に遊びに来た。青春まっさかりで一日でも一時でも無駄になんかしたくなかった。もう二度とこんな楽しい時代は来... ...続きを見る

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2007/05/06 11:49
男が女を愛するとき(サドン・フィクション)
 ゴム輪の世界があった。  ゴム輪が二つあり、二つのゴム輪は遠くにあった。  ある時ゴム輪とゴム輪がものすごく近づいた。  片方のゴム輪、仮に中山新之助と名づけてもいいが、そのゴム輪はもう一つのゴム輪、仮と山本千沙と名づけてもいいけれど、その輪ゴムにもっと近づきたいと思った。けれど山本千沙にとって、その出来事はただの数多くある偶然の一つでしかなかった。  ある日中山新之助は輪ゴムであるにもかかわらず、それが恋であるとはっきりわかった。輪ゴムにとって恋とは、あるいは輪ゴムの人生にとって恋と... ...続きを見る

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2007/05/05 16:14
天国の扉(サドン・フィクション)
 やっと、天国の扉までたどり着いた。  いったいどれだけ旅をしたかはわからない。なんてったって天国には昼も夜も、時間も空間も、善も悪も存在しないからだ。旅と言ったのは単なる喩えで、「じゃあちょっとコンビニに行ってくるからね」という感じで、天国の扉があるのではないということを言いたかっただけだ。  君に天国がどんなところか想像できるかな?  ちょっとやってみよう。  いったい天国は晴れているのか、曇っているのか、雨が降っているのか?もちろんいずれも不正解だ。いったい天国にはどんな人がいるか... ...続きを見る

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2007/05/02 11:00
サタデイ・イン・ザ・パーク(サッドン・フィクション)
 噴水は、高く舞い上がり、風に少しあおられ、しぶきを回りに撒き散らしていた。子供達は、そのしぶきの中を何度も甲高い嬌声をあげながら走り抜けていた。母親達は、時たま思い出したように子供の名前を呼ぶ。けれど、それは気の抜けた合気道みたいな掛け声だった。彼女らは、あらゆる悪いことの原因を誰かの仕業にするか延々と協議をしている陪審員みたいなことをしているのだろう。自分以外の誰かが根本的に悪いのだ。今は今度の新しい担任の無能さを論じているに違いない。あんなんじゃ大事な子供を預けられないわ。だが大事な子供は... ...続きを見る

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2007/05/01 18:10
風に吹かれて(サドン・フィクション)
 心地のよい天気だったのに、急に強い風が吹いた。  僕は帽子を飛ばされ、追いかけた。帽子は、調度上昇気流に上手く乗ったように高く飛び上がり、大きな車道の向こうの公園の方へ消えていった。もし僕が宇宙船の船長であったら、小型飛行船をそのように見送ったであろうかのように。道路は車が激しく行きかい、僕は信号を待たざるを得なかった。  その帽子は、父親の形見だったので、そのまま、OK新しいのを買えばいいや、という風には済ませられなかった。薄茶のハンチング帽で、父親が死んだ20年前には全く冴えない代物だ... ...続きを見る

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2007/04/30 11:08
チェンジ・ザ・ワールド(サドン・ストーリー)
 「神様、ぼくは何一つ信じることなく、誰も心から愛することなく、100回は嘘をつき、そのうち90回は女の子をベッドに誘うためでした。誰でもそうしているものと信じていたら、みんなもうそつきで、実際は意気地のない奴ばかりでした。女の子はすぐに手のひらを返したように冷たくなったり、怒り出したり、本当に厄介なものだと思っていましたが、どうしてももし女の子を口説くチャンスがそこにあったならどうしてもチャレンジせずには言われなかったのです。もし人を殺すチャンスがそのようにあったら、人を殺すかというとそれはし... ...続きを見る

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2007/04/21 13:53
ラビング・ユー・イズ・スウィーター・ザン・エバー(サドン・フィクション)
 「あんた、やる気ないでしょう」と彼女は言った。  「何度も同じフレーズばかり。大げさなフレーズばかり。オーバーアクションばかり。そりゃ初めての人間は喜ぶかもしれないけれど、二度と誰もあんたを必要とはしないわ」と彼女は、ピスタチオばかりより分け食べながら言った。テーブルには、ピスタチオの殻がいくつも散らばっていた。  ぼくはジャイアントコーンをカリカリおとを立てて食べていた。  「下手なんだから、しょうがないだろ」といつもどおり言った。  「それは聞き飽きたわよ。それなら別のことでもやれ... ...続きを見る

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2007/04/21 10:01
ペイパーバック・ライター(サンドン・フィクション)
 光夫は、隣のクラスの中田美香に恋をした。それまでも女の子は好きになったが、どう考えても少年ジャンプより好きという感じはしなかった。つまり、少年ジャンプの発売日にいてもたってもいられなくなるというようなことはなかった。  ところが先月、光夫が木陰で隠れて少年ジャンプを読んでいるのを、美香に見つけられた。彼女は光夫の背後から、さっと少年ジャンプを奪い、校則違反だから、わたしに読ませないと先生に没収させるぞ、といい、光夫の隣で、読み始めたのだった。読んでるのが気になって、顔を近づけて覗き込むと、な... ...続きを見る

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2007/04/19 19:56
ザ・ウェイト(サドン・フィクション)
 「なつかしい」とそこに集まった人間は口々に言った。  友人の出版記念パーティーで、学生時代の人間が久しぶりに連絡がついて集まることができたのだ。その友人は、ゼミが一緒で、彼が自分は小説を書くと告白して以来、ずっと原稿に目を通してきた仲であった。ぼくは読んでも何もいわず、いいね、としかいわないが、いいね、にどうしても態度がるので、彼としては当たり障りのない実験台としてちょうどよっかったのだ。しかし自分のことが書かれているときに限っては文句を言った。彼はそんなつもりはないと言ったが、書き直してく... ...続きを見る

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2007/04/18 16:39
天国への階段(サドン・フィクション)
 地下鉄のF13通路の行き先を示す、案内にしたがっていくと、長い下りの階段に通じていた。まっすぐに伸びたその階段は、行く先が見えないほどだった。普通エスカレータつけるだろうと思いながら、一所懸命降りた。折りきって下から見上げると、二度と歩いては戻れないと思った。きっとどこかにエレベータがあるはずだ。  さらに通路をあるくと、今度はらせん状に深く降りていく階段しかなかった。  僕は携帯を取り出し、今日の商談の相手に電話をしようとしたが圏外だった。  あの長い階段を上るのはいやだったので、とり... ...続きを見る

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2007/04/17 13:52
迷信(サドン・フィクション)
 「君AB型でしょう」とその男は言った。  「ちがうわよ」とわたしは言った。  「じゃB型だ」と彼は続けた。  「いったい何が言いたいの」とわたしはいらいらするのを隠していった。  「きみちょっと変わっているから」と彼女は言った。  「あなたほどじゃないわ」とわたしは言った。  「僕はA型だよ。変わっているなんてことはないよ」と彼は笑いながら言った。  「ひょっとしてA型って自分が変わっていることを自覚できない変わっているひとのことじゃないの」とわたしは、コーヒーに口をつけて、窓ガ... ...続きを見る

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2007/04/17 09:28
マスカレード(サドン・フィクション)
 ぼくは自動車事故に巻き込まれ入院した。顔を怪我したためしばらく顔を包帯で巻いていた。  顔がわからないと不便だと思い、顔の包帯にマジックペンで名前を書いた。鏡を見ながら字を書いたので字はよれよれで、僕の顔はルネ・マグリットの作品のようなシュールな作品になった。  隣のベッドの患者は、まったく身動きのできない状態でベッドに固定されていたが、ぼくは幸い、足の怪我は軽かったので、しばらくして動き回ることが出来るようになった。なんだかたくさんの知り合いが見舞いに来た。見舞いに来るから知り合いのはず... ...続きを見る

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2007/04/10 14:06
ノー・ウーマン・ノー・クライ(サドン・フィクション)
 森を抜けると、草原は朝霧がかかり、太陽は頼りなく大地に光を投げかけていた。  くねった細い道を歩き、風が吹いて霧が消えると、小さなログハウスが見えた。煙突からは煙が遠慮がちに上り、どこかで羊が鳴く声がした。  一昼夜歩き続けたぼくは、そののどかな光景にやっと自分が疲れ果てているのだということを思い出した。足の豆が痛かった。水筒の水もそこをつきかけていた。ぼくは長澤雅美とディズニーランドへ行くのと、ただ寝転がって休んでいいというのだったら、間違いなく休憩を選んだ。長澤雅美の中には魔女が入って... ...続きを見る

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2007/04/09 13:15
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(サドン・フィクション)
 僕はやっと旅を終えようとした。もちろん求めていたものは故郷にあり、人はそれを青い鳥というのだ。  それには何の教訓もなくて、物語には初めと終わりがなければならないという取ってつけた事情によるものだった。  僕はここを物語の終わりとした、ただそれのことだ。 ...続きを見る

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2007/04/08 14:33
タイム・アフター・タイム(サドン・フィクション)
 「何かあったら知らせてくれよ」と克己は、言って電話を切った。  わたしは、何も無い人生がわたしに待っているのを想像してみた。本当に何も待っていないような気がした。わたしは何もなかったようにそれから楽しそうな日々をすごした。グルメに行ったり、岩盤浴に行ったり、何も買わないけれど表参道ヒルズに行ってみたり。合コンに行って男友達も作った。わたしはいろいろやった。けれどわたしには何も起こらなかった。  仕事先の親切な人と親しくなり、結婚することになった。それはとても自然なことのように思えた。彼は優... ...続きを見る

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2007/04/07 21:18
雨に濡れても(サドン・フィクション)
 ライブハウスに急いでいると、急に強い風が吹き、太陽を雲がさえぎり、冷たい空気がまとわりついた。ひと筋の雨が降り出すと、その数を増し、歩道は白い歩道は鈍い灰色に次第に変わった。僕は先を急いだが、いよいよ雨の勢いは増した。雷が鳴り、雨はどんどん大粒になって行った。ぼくは諦めて、通りかかった地下鉄の出入り口で雨宿りすることにした。あめのしぶきがそれでもかかるようになった。少し階段を降り、トランペットのケースを開け、水がしみこんでいないか確かめた。大丈夫だった。  出リ口に戻り様子を伺おうとすると、... ...続きを見る

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2007/04/07 17:36
ピンボールの魔術師(サドン・フィクション)
 卓雄は、お客が店に忘れていった雑誌をパラパラめくった。相変わらず、フルカラーの印刷でどこかにあるパラレル・ワールドの写真が掲載されていた。金の使い道に困っている連中は、金を使った末さらに金の使い道がないのでもっと金の使い道が紹介されているこんな雑誌を必要とするのだろう。金はパラレル・ワールドをぐるぐる回り、たまに環境問題に憂慮した。キャデラックに乗ってロハスな生活。クソだな、と卓雄は思った。  中ほどのページに、ピンボールがひそかにブームという記事を見つけた。店は六本木とかそこらにあり、ダー... ...続きを見る

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2007/04/07 17:30
イエスタデイ・ワンス・モア(サドン・フィクション)
 「またであったときからやり直せればいいのにね」と直子は言った。それはバーのBGMにカーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」が流れているのに気づいて、何気なく言った言葉だった。  「俺もそう思うよ。ところで春美、これCD?それとも有線?」とカウンター越しにいたバーのアルバイトの春美に辰巳は尋ねた。  「ええとね」と言いながら春美はオーディオ機器に目をやって答えた。  「有線よ?で何この甘ったるい曲」と春美は、ミツバチが「オーマイガー」と叫んでいるような顔をして言った。  「お前年い... ...続きを見る

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2007/04/07 17:27
サハラでお茶を(サドン・フィクション)
 彼女が突然僕の前から姿を消してしまってから丸一年経過してしまった。彼女が元気なのは間接的な情報で確かだったし、押しかけて彼女を問い詰めることも難しくはなかった。  けれど何も言葉を残さず姿を消したことについて、後から何か理由を聞いても、よきにつけあしきにつけ、上手くできた伝説くらいの意味しかないと思えたので、そういうことはやめようと思った。彼女がいないととても寂しく、彼女を探し回って歩きつかれ、夜空を見上げたとき、流れる雲が明るい月をさえぎっていくのを見て涙であふれた。  涙をぬぐうと記憶... ...続きを見る

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2007/04/07 17:24
ベスト・オブ・マイ・ラブ(サドン・フィクション)
 彼女は僕がどれくらい彼女を大切に思っていないか、足取りのおぼつかない言葉でしゃべり続けた。彼女は、僕が家事を手伝わないから不満なのだと言った後に、単に手伝わないと言うだけではなくわたしたちの生活と言うものを大切にしていないのだと言った。ぼくは、洗濯と掃除はしたし、朝のゴミ出しもした。確かに手のかかった料理はしなかったが、というができなかったがなんとかその場しのぎの料理はした。けれど僕が料理教室に通えばすむと言う問題なのではないのは当たり前だった。  彼女は自分だけを愛しているか盛んに、まるで... ...続きを見る

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2007/04/07 17:20
ザ・ラスト・ワルツ(サドン・フィクション)
 僕は、ベッドに横たわって壁の見続ける暮らしを続けていた。ラヂオは日本軍が各地で多大なる戦果を挙げ、連合軍を脅かしていると絶え間なくがなりたてていた。もちろんそんなことはないのはここでは常識だった。ここは傷病兵の病院で誰もが惨め極まる最前線から運よく帰還させられたものたちばかりだったからである。  病院の将校は、僕らが愛国の精神に欠けるから満足な軍人としての勤めを果たせないのだと、巡回のたびに言い続けた。満足な食料も弾薬も援護もなしに愛国精神だけで戦争ができると言うのが、国民の常識と化していた... ...続きを見る

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2007/04/07 17:16
メッセージ・イン・ア・ボトル(サドン・フィクション)
 湘南の海岸沿いの道をドライブした。  車は、ものすごく古い軽自動車で、ピカピカの車たちにあおられながら、石ころだらけの山道を登っているかのようにうなり声を上げながら走った。それ以上のでかい音でハイウェイ・スターをかけたいた。ガソリンが空になりなりそうになっていたので、ガソリン・スタンドに車を入れた。  音楽切っていいですか、とスタンドの男は言った。彼の声はなんかいまいましい雑音を切るように催促したような非難がましいトーンをしていた。僕もディープ・パープルなんか聞きたくはなかったが、数日前乗... ...続きを見る

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2007/04/07 17:13
傑作を書くとき(サドン・フィクション)
 彼女とDVDを見ていた。もう半年あまり彼女と暮らしている。彼女はしょっちゅうDVDを借りては長い時間見ていた。その合間に、ポテチを食べたり、僕と話をした。映画やコメディーの5本に1本はとても面白かった。5本に3本は流れていても別に気にもならなかった。5本のうち最後の1本は僕の破壊衝動をかきたてるような内容だった。ぼくは一人暮らしをはじめてから2回テレビ受像機を破壊している。ギターも3本破壊している。それはピート・タウンゼントにはかなわないことだが、ソリッド・ボディーのエレクトリック・ギターを破... ...続きを見る

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2007/04/07 17:08
ユー・アー・ザ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ(サドン・フィクション)
心の影は次第に広がる。  僕は僕の心の中に入り込み、その影と戦うことを決めた。心の中はとても退屈で、果てしなく続くあらゆる繰り返しの映像で満ち溢れていた。時折こころの持ち主の運命を変えかねない絶世の美女が彼に微笑みかけたりするのだけれど、こころはそれを何かそれに似た平凡な風景にすぐに置き換えた。こころは美しいものに魅入られるより、こころに隙が出来ることを避けているかのようだった。心の職人は心に何も起きなかったことにするべく、こてを取り出し、美しいもの、醜いもの、驚くこと、残酷なこと、すべてを灰... ...続きを見る

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2007/04/07 17:02
サムシング(サドン・フィクション)
 朝ジョギングをしていると、左目に何かが入った。立ち止まってしばたいたが、それは取れなかった。違和感はあるものの痛みはないので、とりあえず目をこするなどせず、そのままジョギングを続けた。ジョギングをしている間何か変だった。ものすごい乱視になったようだった。ものがひどく二重に見えた。さっきの奴のせいに違いなかった。しかししばらくすると慣れないでもなかった。家に帰ったら眼下に以降と思ったが日曜だった。明日眼下に行くことにした。  薬屋に行き芽の洗浄液を買ってよく洗った。そいつは取れなかった。このま... ...続きを見る

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2007/04/07 16:55
テキーラ・サンライズ(サドン・フィクション)
 その店は落ち着いた照明が素敵で、グラスやボトルに反射して暗いダイヤモンドの洞窟の中にいるような気分に裕子をさせた。音楽も邪魔にならないように注意深く選曲されていた。その所為で大声を上げてしゃべる客もいなかった。みんな人生の奥深い秘密について打ち明け話をしているみたいにみえた。  彼女は、テキーラ・サンライズを飲み続けた。彼女が引きずっている青春の面影みたいに。  久しぶりに会った広志は、生まれたばかりの子供のことを話していた。裕子は子供が好きではなかったが、そのことは誰にも話していなかった... ...続きを見る

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2007/04/07 16:46
デスペラード(サドン・フィクション)
 彼女は7人の男を掛け持ちし、二人は恋人であり、一人は不倫であり、三人はろくでなしで一人はプラトニックな形而上学的恋愛をしていた。彼女がどのようにスケジュールを組み、誰とセックスししなかったのかは僕にはよくわからない。僕はその中の一人であった。僕は彼女がビーナスのように好きで、身も心も捧げたかったが、彼女はそのようには相手にしてくれなかった。ぼくはぼくで、パート・タイムの女の子を作っては、ゴミ箱に入れた。退屈紛れに付き合った女がもっと退屈だというのは、僕に倫理的動揺を与えた。身体が目的なのとしば... ...続きを見る

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2007/04/07 16:44
オール・ニード・イズ・ラブ(サドン・フィクション)
 東京タワーは、ライトアップされていた。  最初に来たのは、たぶん、中学生のときだと思うけれど、違うかもしれない。大学に入学してまた来た。東京はひどく人が多く夏休み中にノイローゼになった。違う理由かもしれない。その理由を考えることが苦痛だった。しばらくアパートに一人閉じこもっていた。まだ複雑な問題を相談できる気楽な友達がいなかった。地元の友達に電話したりしたが、なんか東京がどれだけ楽しいかを説明しなくてはならずそれも苦痛になった。東京はどれだけ楽しいかと思い、とりあえず東京タワーに行った。施設... ...続きを見る

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2007/04/07 16:42
ロンサム・スージー(サドン・フィクション)
 ひとりぽっちのスージーの前にとうとう悪魔が現れた。  悪魔は、カルティエのブラックスーツに、代々伝わるシルクの黒いマントを身にまとっていた。いまどき黒いマントなんか羽織っているのは悪魔しかいない。それくらいスージーにもすぐわかった。  「いい天気なのに浮かない顔しているね」と悪魔はスージーにい言った。  スージーはいつも浮かない顔をしていたが、今浮かない顔をしているのは悪魔なんかが現れたためだった。悪魔はもっと頭がよくて底意地の悪い奴だと思っていたので、スージーはさらにがっかりして浮かな... ...続きを見る

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2007/04/07 16:36
ワン・ラブ(サドン・フィクション)
 ぼくはその町に到着し、ホテルを探さなければならなかった。最初に見つけたバーに立ち寄った。店内はパッヘルベルのカノンが流れており、人々はとても静かに飲んでいた。ものすごく健康的なバーだった。僕に目をやる人もいたが、映画のエキストラみたいに無視された。カウンターの席に座り、ビールを頼んだ。バーテンダーは言った。  「どこから来てどこへ行くんだい」と。  「いや、しばらくここにいたいんだ」と答えた。  「通りすがりってわけじゃ無いんだね?」と彼は尋ねた。  「ここは通りすがりが多いのかい?」... ...続きを見る

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2007/04/07 16:02
リトル・ウィング(サドン・フィクション)
 みどりは決して無能でも不遇でもなかった。どちらかといえば美人ですらあった。  希望がすべてかなうことも無かったが、耐え難い絶望に陥ることも無かった。誰もにできるだけ優しくありたいと思ったし、誰もがおおよそ親切に接してくれた。  みどりは、自分の人生がディズニーランドのようであればいいと思うほど幼稚ではなかった。けれど、安全なハイキング・コースを歩んでいるのだと思えた。確かに坂道は続き登るのは辛くあるくのをやめたいと思うこともあったが、それはハイキングコースで人波についていけば必ず展望は開け... ...続きを見る

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2007/04/07 15:52
ユーブ・ガット・ア・フレンド(サドン・フィクション)
 「世の中には、二種類の人間がいる。ろくでもない友達がいる奴とまったく友達がいない奴だ」と同じ牢屋にぶち込まれた男は僕に言った。  「お前はどっちだ」と彼は最後の審判のように言った。  「君の意見には賛成できないね。」  僕は続けた。  「必要なときに時に限って友達がいない奴といつも友達がいない奴だ」と。  「それも言い考えだ。まるでベッシー・スミスのブルースみたいだな」というと彼はその古い歌を歌い始めた。  ひどい音痴だった。狭い牢屋でそれは拷問に等しかった。しかし何を僕は吐けばい... ...続きを見る

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2007/04/07 15:50
ヘルプレス(サドン・フィクション)
 僕の世界が少しずつ広がっていくにしたがって、世界が悲惨なものであることに気づかざるを得なかった。  いつも父とは母は怒鳴りあっていたが、それはどこでもそうなのだと思っていた。父親は母親をぶん殴る以上に僕をぶん殴った。少なくとも小学生までは。母は内にはお金がないから我慢しなさいといった。お金がないことが行動の尺度になった。土と遊んでいるときはそれで十分だった。  父は酒の飲みすぎで胃を悪くし血を吐いて死んだ。死んだときも酒瓶を持っていた。父の葬儀を知らせるべき相手はいなかった。死ぬということ... ...続きを見る

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2007/04/07 15:47
ヘルプ!(サドン・フィクション)
 大学のビュッフェで僕はノートに向かっていた。  「それから」と書いてからぼくはコーヒーを2杯飲み、タバコを5回吸いに喫煙コーナーに行った。  だいたいノートには「それから」としか書いてなかった。それは夏目漱石が小説のタイトルが決まらず、その次の連載だったから「それから」にしたのだと言う話を聞いて、僕も小説を書きたいと思う、それにあやかり「それから」と書いてみたのだ。  雅子は高校からの大学の友達だったが、美人でセンスがよく、しかも小説を書き、すでに小さな文芸賞を獲得していた。彼女は美人で... ...続きを見る

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2007/04/07 15:30
虹の彼方へ エリナ・リグビー2(サドン・フィクション)
僕と彼女は、名前はまだ知らない、彼女は混み合うハンバーショップに入って食事をした。ぼくはチーズバーガーと頼み、ハンバーグをゴミ箱に捨て、出がらしのコーヒーと一緒に食べた。彼女はアイスクリームとホットコーヒーを頼み、コーヒーにアイスクリームを付けてぐるぐるかき回して飲んだ。彼女はダイエットにはよいのだといった。むしろ腹に悪いと言うべきだと思ったが言わなかった。  店は彼女みたいな男女が足を投げ出して腰掛、代わる代わる嬌声を上げていた。全員2時間以上粘っているみたいだった。こんな回転の悪い店を明け... ...続きを見る

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2007/04/07 15:09
エリナ・リグビー(サドン・フィクション)
 マスターは、スローなテナー・サックスの「蛍の光」を流した。しばらくして何組か残っていたお客に声をかけた。支払いをしている間、ウェイトレスが、預かり物を取り出し、お客に渡す。静かだが親しみのある声で、ありがとうございました、またおこしくださいませ、といってゆっくり頭を下げた。  最後の客が帰ると、マスターは手際よく今日の売り上げを清算した。その間に、ウェイトレスの女の子、美晴ちゃんなのだが、彼女は、瞬く間に私服に着替え、ハンドバッグとバイクのヘルメットをわしづかみにして、お先に失礼しま〜す、と... ...続きを見る

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2007/04/07 15:06
シーズ・リービング・ホーム(サドン・フィクション)
 仕事の接待で、終電を逃した。またサウナか。経費削減でタクシーで帰宅することも最近はまったくなくなった。タクシーで帰って数時間寝て出社するのも馬鹿みたいだった。  三塁ベースからホームにスライディングして、また全力で三塁ベースまで走り、再びホームに走った昔の野球の練習みたいだった。  妻は、最初の頃は、身体を張ってホームをブロックしたものだが、最近はこの練習に意味はないように思うようになったらしい。ぼくだって意味があるとは思えないが、三塁ランナーだということは重大な意味があった。たとえバッタ... ...続きを見る

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2007/04/07 15:02

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